食形態マップについて

食形態マップについて

はじめに

患者さんが急性期病院からリハビリ病院や施設、自宅などに移られる際に紹介状とともに多くの情報提供がなされています。「摂食嚥下障害」がある患者さんにおいても病院で提供されている食事の種類や形態(食形態)の情報が必要になるため食事に関連した情報を提供しています。「摂食嚥下障害」とは上手に食べ物などを飲み込むことができない状態で、栄養失調や誤嚥による肺炎などの原因になります。
しかしながらこれまでは、食形態の呼び方が病院や施設によって異なるために、食形態がわかりにくく、適切な食事を提供するうえで問題となることがありました。
そこで今回、医療および介護・福祉関係者が食形態について共通認識をし、各施設で適切な食事を提供できることを目的として「食形態マップ」を作製しました。「食形態マップ」は施設間の食形態を横断的に比較するための地域連携ツールで、食形態に関する情報伝達の混乱を可能な限り少なくすると考えています。

「食形態マップ」の使用方法

「食形態マップ」とは、自施設と他施設の食形態を把握するためのもので、他施設では「○○食」と呼ばれている食事が、自施設ではどの食事に該当するかを確認する際に使用します。確認する際には、縦軸の分類コードをもとに自施設と他施設での食形態の確認を行ってください。

(注)食形態マップのコードは、必ずしも摂食嚥下障害の重症度に対応した食形態の順序ではありません。また、コードの順番で形態をアップさせるためのものでもありません。

「分類コンセプト」早見表

コード

形態

目的・特色

主食の特色

備考欄への記入事項

0

j

均質で付着性・凝集性・かたさに配慮したゼリー

嚥下評価・訓練用
少量すくって丸呑み可能
残留した場合にも吸引が容易
たんぱく質含有量が少ない

ゲル化剤の種類

t

均質で付着性・凝集性・かたさに配慮したとろみ水

嚥下評価・訓練用
少量ずつ飲むことを想定
ゼリー丸呑みで誤嚥したりゼリーが口中で溶けてしまう場合
たんぱく質含有量が少ない

とろみ調整食品の種類

1

j
体温で液体になる

均質で付着性・凝集性・かたさ、離水に配慮したゼリー・プリン・ムース状のもの

咀嚼能力は必要とせず、スプーンですくった状態で食塊状となっている
送り込む際に多少意識して口蓋に舌を押し付ける必要がある
0jに比し表面のざらつきあり

ゲル化剤の種類

j
体温で液体にならない

物性に配慮したおもゆ・ミキサー粥のゼリー

2

1
粒なし

スプーンですくえるピューレ・ペースト・ミキサー状

口腔内の簡単な操作により適切な食塊状となるもので、なめらかで均質なもの

粒がなく付着性の低いペースト状のおもゆ・粥

とろみ調整食品の有無と種類

1
粒あり

口腔内の簡単な操作により適切な食塊状となるもので、軟らかい粒などを含む不均質なもの

粒があるが軟らかく、離水もなく付着性も低い粥類

3

形はあるが押しつぶしが可能で食塊形成が容易
多量の離水がない

舌と口蓋間で押しつぶしが可能なもの
押しつぶしや送り込みの口腔操作を要し、かつ誤嚥のリスク軽減に配慮がなされているもの
様々な技術を用いて軟化させた市販の製品を含む

離水に配慮した粥

とろみ調整食品・ゲル化剤の種類

4


1cm未満

大きさ1cm未満
軟らかい

軟の基準は「歯・義歯がなくても歯茎でつぶして食べられる」もの
誤嚥と窒息のリスクを配慮して素材と調理法を選んだもの

全粥や軟飯

硬さ・大きさ
とろみ調整食品の有無と種類
禁止食材


1cm以上

大きさ1cm 以上
軟らかい


1cm以上

大きさ1cm以上
硬い

硬の基準は「歯・義歯を必要とする(望ましい)」もの
誤嚥と窒息のリスクを配慮して素材と調理法を選んだもの


1cm未満

大きさ1cm未満
硬い

一般食

食材配慮あり

咀嚼機能に配慮あり(揚げ物なし、繊維が多いものを除く等)

米飯

食材・調理の配慮

食材配慮なし

咀嚼機能に配慮なし

(注)「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」(以下略称「学会分類2013(食事)」が発表され、解説文において「段階を大きく5段階とし、これにより既存の分類との整合性を取り、多くの施設で基本的に使用できることを目指した。各施設・地域で、より細かい区分を作成・利用することは可能である。」との表記がなされていることから、副食においては食形態の多いコード4以上に独自の分類基準を設けた。

<主食について>

・「学会分類2013(食事)」早見表の主食の例をもとにコード分類と主食名を表記した。また、備考欄に各施設で使用しているゲル化剤やとろみ調整食品を表記した。

<副食について>

・コード1jはたんぱく質の含有が多く0jに該当しない食材があるため「体温で液体になる」ものと「体温で液体にならない」ものとで分類した。

・コード4は副食に関して「軟らかさ」と「大きさ」の視点から4つの細分類表記とした。

・「軟らかさ」の基準は咀嚼力の観点から「歯・義歯がなくても歯茎でつぶして食べられる」ものをコード4―軟とし、軟らかさに配慮しているが「歯・義歯を必要とする(望ましい)」ものをコード4―硬とした。「大きさ」の基準は窒息の危険性を考え、1cm未満と1cm以上に分類した。

・一般食においてコード4には分類できないものの硬い食材に配慮した食形態を用意している施設があることから、一般食を「食材配慮あり」「食材配慮なし」に分類した。

・特別な対応ができる場合は、「とろみ対応」や「キザミ対応」等を備考欄に付記する

(注)「コード2」に関しては、主食・副食のコードは一致するものではなく、主食・副食それぞれに応じたコードである。

嚥下共通化検討会

本食形態マップは「食力の会」(石川県能登地域)で作成された「食形態マップ」を参考にさせて戴いており、又その使用許可を戴いておりますので、このフォーマットの無断使用・転記を禁じます。

2016年4月5日

食形態マップ

・岐阜県立多治見病院

・サニーサイドホスピタル

・城山病院

・多治見市民病院

・岐阜県立下呂温泉病院

・高井病院

・土岐市立総合病院

・東濃厚生病院

・メモリアル光陽

・特別養護老人ホームビアンカ

・中津川市民病院

・白山リハビリテーション病院

・春日井リハビリテーション病院

・市立恵那病院