IVR
手術の幅を広げ、安全性を高める画像下治療の活用

当院で行っているIVR(Interventional Radiology)のメリットや活用方法についてご紹介します。

IVR 部長:館 靖

画像を見ながら行う体への負担が少ない治療方法

 IVR(アイ・ブイ・アール)とは、Interventional Radiology=インターベンショナルラジオロジーの略で、日本語では「画像下治療」と訳されます。X線やCT、超音波などの画像診断装置で体の中を透かして見ながら、カテーテルや針などの細い医療器具を入れて、標的となる病気の治療を行っていくものです。血管の中をたどって臓器まで器具を届かせたり、最近ではCTを使って体の外から針を刺したりすることもあります。外科手術のようにお腹や胸を切らずに臓器や血管の治療ができる方法ですので、患者さんの体への負担が圧倒的に少ないのが大きなメリットです。止血への活用においては、造影剤を使って出血している箇所を特定しピンポイントで治療ができるため、臓器の温存にも役立っています。また、IVRは全身麻酔なしで行える場合が多いので、全身の状態が悪い方や、外傷があり全身麻酔をかけにくい方でも治療ができ、緊急手術にも向いているのが特徴です。

手術の幅を広げ、より安全な手術を可能にする

 当院では、IVRをさまざまな診療科で活用しており、たとえば産婦人科では大量出血の際の止血対応にて実施しています。ほかには外傷による肝臓や脾臓の治療において、お腹を開けるとそれだけで出血量が増えてしまうためIVRを活用します。血管の中に器具を入れ、血管が破れている箇所を見つけて修復するのです。呼吸器外科では、診断に必要なCTガイド下生検において、糖尿病・内分泌内科ではカテーテル診断における採血に活用しています。あとは、腫瘍を取るような手術の場合、たくさんの血管がある場所を切ることになるため、手術の前に血管を詰めて出血を抑制し手術を安全に行うということも補助的に実施しています。このように、他の診療科の先生たちとタッグを組んで、手術の幅を広げ、手術をより安全にすることがわたしたちの使命でもあります。

ハイブリッド手術室を活用して、IVRの可能性を広げたい

 4月にオープンした中央診療棟にあるハイブリッド手術室では、血管内治療と外科的手術がその場ですべて行えます。これまでだと手術室とカテーテル室が分かれていたため、患者さんを移動させる必要があり、そこに大きなリスクがありました。そんなリスクをクリアすることのできるハイブリッド手術室を、今後は活用していきたいと考えています。たとえば産婦人科では、出産や帝王切開などの危機的な出血が予測されているときに、大動脈を遮断するバルーンを事前に入れておく「バルーン閉塞術」を実施できるようにしていく予定です。IVRはさまざまな使い方や組み合わせがありますので、麻酔科の先生や各診療科の先生、コメディカルの技師や看護師と協力し、話し合いながら活用方法を考えていきたいと思います。