皮膚科
悪循環を断ち切る アトピー性皮膚炎の治療方法

アトピー性皮膚炎の治療方法について、皮膚科部長の柴田章貴先生にお話を伺いました。

地域の基幹病院の皮膚科としてさまざまな皮膚疾患を診療

 現在、皮膚科では医師3名、看護師2名で診察にあたっております。この地域の基幹病院の皮膚科として、地域の先生方よりご紹介いただいた患者さんのアトピー性皮膚炎、蕁麻疹、薬疹、尋常性乾癬、脱毛症、尋常性白斑のほか、蜂高織炎などの細菌感染症、帯状疱疹、水痘などのウイルス感染症、足白癬、爪白癬などの真菌感染症や、天疱瘡、類天疱瘡などの自己免疫疾患、各種皮膚腫などさまざまな皮膚疾患の治療を行っています。

アトピー性皮膚炎に効果的な注射薬と飲み薬

 アトピー性皮膚炎はよくなったり悪くなったりを繰り返す痒みのある皮膚の病気です。皮膚のバリア機能が低下して汗やハウスダストなどの刺激に敏感に反応し、皮膚炎が生じて痒くなり、掻くことによって皮膚が傷ついて余計に皮膚炎がおこりやすくなる悪循環が生じてしまいます。保湿剤などで皮膚のバリア機能を高め、ステロイド外用剤を塗ることにより皮膚炎を抑え、また、痒みに対しては冷やすことで対処して治療を行うのですが、悪循環を繰り返し悪化した状態ではこれらの治療では対処できず、悪循環を断ち切るような治療を強化する必要があります。
そこで活用したいのが注射薬と飲み薬です。従来は保湿剤やステロイド外用剤しか治療薬がありませんでしたが、近年、アトピー性皮膚炎の治療薬として、注射薬と飲み薬が続々と使用可能になってきています。注射薬には、アトピー性皮膚炎の発症に強く関与している物質の分泌を抑えるデュピクセント、アドトラーザ、イブグリース、アトピー性皮膚炎の痒みに関与している物質の分泌を抑えるミチーガがあり、飲み薬には、炎症の伝達をブロックするJAK阻害薬であるオルミエント、リンヴォック、サイバインコがあります。


 飲み薬のほうが安全なイメージがあるかもしれませんが、JAK阻害薬は帯状疱疹やカポジ水痘様発疹症など感染症のリスクがあるほか、血液検査において異常が生じる可能性があるとされ、定期的な血液検査が必要になります。一方で、注射薬はアトピー性皮膚炎の病態にかかわる部位のみに作用するため感染症のリスクが低いのがメリットです。そのため当院ではデュピクセントをはじめとした注射薬を第一選択として使用することが多くなっています。これらの治療では痒みや皮膚炎がおさまるだけでなく、皮膚がもちもちとした非常にいい状態になることも実感できます。注射がどうしても苦手な場合や、注射薬で難治な場合、注射薬の副作用で顔面の赤みなどが出る場合には、JAK阻害薬の飲み薬を選択します。塗り薬にも新たな治療薬が登場しており、これまでのステロイド外用剤以外にJAK阻害薬の外用薬であるコレクチム、PDE-4阻害薬の外用薬であるモイゼルトがあり、どちらも即効性はありませんが皮膚のバリア機能も回復するため、治った後の皮膚の状態がよくなることが特徴です。

なかなかよくならないとお悩みの方に当院を活用してほしい

 アトピー性皮膚炎の治療は、最近、劇的な進化をとげています。しっかり塗り薬を塗ってもよくならないなどございましたら、かかりつけ医の先生にご相談いただき、当院にご紹介いただけましたら幸いです。