生きることの基本でもある“食べる”という行為について
さまざまな支援を行う摂食・嚥下障害看護認定看護師について紹介します。

地域医療連携センター｜入退院支援担当 看護師主査 二村 洋代

摂食・嚥下の可能性への気づきが、認定看護師を目指すきっかけに

当院には、さまざまな分野において専門的な技術や知識を用いて働く「認定看護師」がいます。私は「摂食・嚥下障害看護認定看護師」で、患者さんの口腔ケア方法、食事内容、食事摂取方法の判断や、患者さん・ご家族のセルフケア能力の向上、スタッフのマネジメント能力向上のための支援などが主な業務内容です。
私はもともと脳外科・神経内科の混合病棟に勤務していました。脳卒中などで意識状態が悪い患者さんは、治療はもちろん、日常ケアやリハビリを継続した上で口腔ケアで口を刺激すると脳にも刺激が加わり、やがて口から食事をとることができるようになります。口を使うことで意識状態もさらに改善し、おむつ内での排泄だった方がトイレに行けるようになるなど、改善がつながっていくのです。そういう方をたくさん見て、口腔ケアや経口摂取に可能性を感じました。後遺症により誤嚥性肺炎になってしまった患者さんは、合併症やさらなる誤嚥の可能性があり、経管栄養を継続することが多いのですが、経口摂取を開始するタイミングは非常に重要で、遅れると予後に影響する可能性もあります。こうした時、医師に経口摂取を提案できるようになりたいと思ったのがきっかけで、摂食・嚥下障害看護認定看護師を目指すようになりました。

患者さんやご家族、スタッフの指導から、栄養管理まで担当

認定看護師になってからは、食事介助などの支援を通して看護師へのアプローチを行っています。言語聴覚士とも連携を深め、患者さんのケアをブラッシュアップしています。今は入退院支援の部署で、退院後の生活指導や栄養管理についてのご説明などが基本の業務です。やはり、食事がきっかけで患者さんの状態が改善していくのを見たときにやりがいを感じますし、患者さんご本人はもちろんご家族の方も“食べられる”ことを喜んでくださるのが嬉しいですね。やはり食べることは生きることの基本なのだと実感します。

地域での連携を目指し、「食形態マップ」を作成

当院では、食形態を把握するための「食形態マップ」を活用しています。これは他施設で「○○食」と呼ばれている食事が自施設ではどの食事に該当するかを確認するためのもの。病院や施設によって異なる食形態の呼び方について医療および介護・福祉関係者が共通認識をし、患者さんが転院される際などに各施設で適切な食事を提供できることを目的として「食形態マップ」の作成に至りました。施設間の食形態を横断的に確認するための地域連携ツールとなり、情報伝達のスムーズ化を図っています。

院内の仲間を増やすことが目標のひとつ

　今、院内にいる摂食・嚥下障害看護認定看護師は私一人なので、もっと人数が増えてほしいなと思います。摂食・嚥下障害看護認定看護師は、それぞれの患者さんに合わせてさまざまな対応をしなくてはいけないのでとても大変な仕事ですが、自分の提案が医師に納得いただけて、治療に加えて栄養管理がうまくいき、それによって患者さんの体力が戻っていく姿を見ると本当に嬉しくなります。いろんな看護スタッフに興味を持ってほしいです。