血液内科
急性白血病治療の地域完結を目指した骨髄移植の導入と拡大

血液内科では、昨年度から血縁者をドナーとする骨髄移植をスタートさせ、今年度は準備が整い次第、非血縁ドナーを含めた骨髄移植へと拡大させる予定です。

副院長兼血液内科部長:小澤 幸泰

白血病治療の鍵となる造血幹細胞移植

 骨髄移植をはじめとする造血幹細胞移植が適応される疾患と言えば急性白血病ですが、超高齢社会を迎えた現在、全国で高齢者の患者さんが年々増加しています。白血病は「血液のがん」と言われ、白血球が異常に増えもしくは異常に減り、感染症を起こしやすくなるのが特徴です。急性白血病は、まず化学療法(寛解導入療法)を行います。これは、強力な抗がん剤を投与して、悪い白血球(白血病細胞)をとことん減らすことを目的としており、この治療で患者さんの約8割が寛解すると言われます。しかし、白血病細胞が残って次の抗がん剤治療で回復が望めそうにない場合や再発の場合は骨髄移植が必要です。また、治療前の遺伝子検査で、統計的に予後が悪い遺伝子のパターンが解明されつつあり、その場合は早急にドナーを探す手配をかけます。骨髄移植は外科的な移植ではなく、ドナーの方の骨髄からいただいた骨髄液を点滴するものです。適合していれば生着率は9割と言われていますが、免疫反応(GVHD)や感染症のリスクがあり、全体の成功率は6~7割程度です。ハイリスクハイリターンの治療で「不治の病」と言われた時代と比べるとずいぶん改善されてきました。

非血縁者からの移植を可能にし、骨髄移植の数を増やす

 ドナーの候補はまず血縁者の中で探します。安全に移植をするためには、原則としてドナーと患者さんの白血球の型「HLA(ヒト白血球抗原)」が一致している必要があるのです。HLAは両親から半分ずつ受け継ぐので、兄弟・姉妹の間で一致する確率は25%となり、合わないことのほうが多いのが現実です。その場合は日本骨髄バンクや公的さい帯血バンクなどを通じて非血縁ドナーを探します。非血縁者間では、数百から数万分の1の確率でしか一致しませんが、可能性が広がるのは確かです。当科では、2023年度に1例目の血縁者間同種骨髄移植を実施し、さらに2例目の同種移植として、血縁者間末梢血幹細胞移植を施行しました。
2024年7月には県下3番目となる日本骨髄バンクの施設認定を取得し、今後は非血縁者からの移植にも取り組んでまいりますので、骨髄移植を受けられるようになる患者さんがかなり増えるのではないかと思います。

東濃地域で治療の完結を目指す

 これまでは当院で骨髄移植ができず、名古屋の病院を紹介することもありましたが、移動時間がかかるうえ、移植後に何かあったときのすばやい対応が難しいというのがネックでした。地域内で最後まで治療ができる施設の必要性は非常に高いと考えます。当院は4月に新たに中央診療棟がオープンし、今まで以上に設備が充実しております。また、移植後の患者さんの長期フォローアップ(LTFU)体制を整え、他の移植施設で造血幹細胞移植を受けた患者さんも受け入れております。東濃地域で急性白血病の治療が完結できる見込みですので、今後の血液内科にご期待ください。