循環器内科×臨床工学部
チーム医療を強化しより安全で質の高い治療を

循環器内科:部長 堀部 秀樹
臨床工学部:臨床工学技士 永井 涼平

左:臨床工学部 臨床工学技士 永井 涼平 ・ 右:循環器内科 部長 堀部 秀樹

医療機器のプロ、臨床工学技士

永井:当院には、医療機器の専門医療職である臨床工学技士18名で構成されている臨床工学部という医療部門があり、24時間365日緊急の案件も対応できる体制をとっています。臨床工学部の主な業務内容は、医療機器の保守点検を行う「医療機器管理業務」と、生命維持管理装置の操作を行う「臨床技術提供業務」で、生命維持管理装置とは、人工呼吸器や血液透析、人工心肺装置などの人が生きていく上で必要な呼吸、代謝、循環を維持するために使用する装置のことです。

堀部:臨床工学技士は医療機器の使い方からトラブルシューティングまで熟知している“院内の医療機器のプロ”ですよね。

永井:まさにそうです。臨床工学技士全員が、医師の皆さんから満足してもらえるようなレベルの知識や技術を身につけるために、日々後輩指導やトレーニングを行っています。

機器の管理から治療・手術まで

永井:医療機器の定期的な保守・管理を実施し、使用するごとに点検および整備をするのも臨床工学技士の仕事です。手術室や集中治療センターではさまざまな診療科が扱う多種多様な機器があるため、それらが安全に使用できるよう管理を実施します。手術室では、手術に立ち会って機器の操作や術中に発生する機器の不具合への迅速な対応をしており、集中治療センターでは、医師や多職種との合同カンファレンスに参加し、機器の特性などの情報を提供できるようにしています。また、医療機器を正しく安全に使用するには知識が必要なため、定期的な勉強会や、医師や看護師、コメディカルを対象とした医療機器の使用方法・注意事項に関する研修も実施しています。

堀部:医療機器に詳しい臨床工学技士が立ち会うことで、治療や手術の安全性を高めることができています。最近だと、コロナ禍で人工心肺装置ECMO(エクモ)を使うことが増えて、臨床工学技士という存在の大切さを感じますね。

永井:ECMOはいかに速く導入できるかというのが鍵なので、普段は循環器に関わっていない臨床工学技士も操作ができるように、全員で空いた時間にトレーニングをしていました。世の中の状況に合わせて、求められる技術を身につけることが大切なのだと実感しましたね。

循環器内科におけるカテーテル治療で連携

堀部:循環器内科では、心筋梗塞や狭心症、不整脈、動脈硬化症など、主に心臓や血管に関する疾患を対象としており、薬物療法や内科治療の他に、冠動脈・不整脈・四肢血管などに対するカテーテル治療や心臓植え込み型デバイスの治療を行っています。

永井:狭心症や動脈硬化症におけるカテーテル治療では、血管の中を超音波で見る装置を臨床工学技士が操作し、測定や画像の解析をしています。不整脈におけるカテーテルアブレーション治療では、心電計や心臓の中を解析する3次元マッピングシステム(CARTO、Ensite)を操作します。血管内手術では、病変を直接目で見ることができないので、さまざまな機器を利用して血管内の情報を解析する必要があります。解析結果が治療の結果に影響されますので、正確な操作と解析は大切な仕事になります。

堀部:臨床工学技士が綺麗な画像を出してくれることで医師は治療に必要な情報を得られますので、治療方針の決定に非常に役立っています。また、治療や手術に集中しているときには、画像や心電図の異常に気づきにくいので、いち早く気づいて注意喚起してくれる臨床工学技士は医師にとって欠かせない存在です。

それぞれの職種が能力を発揮できるチーム医療の可能性

堀部:診療科と臨床工学部の連携は、どの病院でも増えてきています。特殊な機器を用いることも多いので、専門的な知識をもっている臨床工学技士がいたほうが安全だという考え方です。医師はより治療に集中することができますし、患者さんの病態変化などにも注目することができます。

永井:臨床工学技士のほかにもさまざまな職種が協力する「チーム医療」がポイントになってきていますよね。当院では、治療や手術においては医師、看護師、放射線技師、臨床工学技士といったスタッフが協力し、それが終わってからは、病棟の看護師や薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師、理学療法士などが協力し、患者さんが退院されるまでをサポートします。最初から最後まで、トータルでチーム医療を提供しているといえますね。

堀部:さまざまな職種のスタッフが専門的な部分で能力を発揮し、リスペクトしあうことで長所を伸ばすことができていると感じます。苦手な部分についても、他職種のスタッフから知識を得て次につなげることができます。そうやってスタッフそれぞれがブラッシュアップすることでよりよい医療を提供していきたいですね。

より連携を深めて新たな治療にも挑戦

左:循環器内科 部長 堀部 秀樹 ・ 右:臨床工学部 臨床工学技士 永井 涼平

堀部:現在建設中の新病棟では、心臓が動いている状態でカテーテルを用いて人工弁を心臓に装着する治療法「TAVI」を導入する予定です。さまざまな職種の皆さんと連携し、そういった新しい治療に挑戦していくのが今後の目標です。

永井:最近では毎年新しい医療機器が出てきたり、今まであったものがリニューアルされたりしていますよね。トラブル対応を含め、すぐに対応できるようにするというのが私の目標です。

堀部:機器のトラブルが起きて手術が止まってしまうと、次のステップにいけなくなるのはもちろんのこと、手術時間も伸びますし、合併症のリスクも高まります。トラブル対応をマスターされている臨床工学技士さんがいることがとてもありがたいです。

永井:医療機器メーカーの方と同じくらいの知識をもつということを常に意識しています。人の命に関わることなので、とにかく速くトラブルシューティングをできるように日々トレーニングしていきたいですね。