より負担なく、傷を小さく肺がんにおける胸腔鏡手術

開胸手術に比べ、負担の少ない胸腔鏡手術。呼吸器外科での取り組みについてご紹介します。

呼吸器外科医師(杉山医師)
呼吸器外科 杉山医師

呼吸器外科では、胸部の外科的治療を担当しています。具体的には、肺病変(肺がん、転移性肺腫瘍、自然気胸など)、縦隔病変(胸腺腫、奇形腫、神経原性腫瘍など)の手術や胸部外傷の治療を行っています。肺がんに関してはガイドラインに沿った標準治療をベースに、患者さん一人ひとりの身体的、精神的、社会的状況をふまえて治療方法を選択。呼吸器内科・呼吸器外科・放射線科が協力して治療にあたっています。

呼吸器外科では、肺がんにおける胸腔鏡手術に取り組み始めました。胸腔鏡手術とは、細いカメラを用いて行う、いわゆる内視鏡手術のこと。一般的な開胸手術では背中からわき腹にかけて15~20cm程度切開し肺に直接手で触れて切除します。直接触れるために開胸器という機械を用いて肋骨と肋骨の間を広げるため、術後の痛みの大きな原因となることも。一方、胸腔鏡手術では1~2cmの穴を胸部に数か所開け、ビデオカメラを挿入し、モニター画像を見ながら別の穴から挿入した手術用器具で肺を切除します。胸腔鏡手術では切る筋肉の量が少ないため、呼吸筋が温存され、術後の呼吸関連合併症の軽減につながります。また、傷も小さく患者さんの身体への負担を軽減することができます。術後の痛みが軽いため、手術の1週間後には退院も可能です。術後の呼吸機能の回復も早くなるため、日常生活や仕事への復帰も早めることができます。そのため、体力の衰えた人や高齢者に適した手術だといえるでしょう。  胸腔鏡手術は全国的に主流になってきていますが、同時に医師の熟練が必要な難しい手術でもあります。多治見病院でも今後肺がんの手術において胸腔鏡手術という選択を可能にするために、スタッフの技術向上を目的としたトレーニングや使用器具の充実など環境を整える準備を始めました。

当院の全身麻酔による手術は年間90~100例程度です。そのうち肺がんが40~50例、気胸が20~30例、縦隔腫瘍が10例程度となっています。これまでは胸腔鏡手術を実施していなかったため、胸腔鏡手術を希望される患者さんには名古屋などの都市部の病院を紹介する必要がありました。そのような多治見をはじめとした東濃地域の患者さんの通院にかかる負担を減らすためにも、多治見病院の呼吸器外科で胸腔鏡手術をできるようにすることが重要だと考えます。まずは胸腔鏡手術のできる環境を整え、これからもさまざまな機器や治療方法を検討しながら、地域の患者さんに寄り添えるような呼吸器外科にしていきたいと思います。