放射線治療技術部門

放射線治療技術部門

放射線治療は手術、薬物療法とともにがん治療において大きな役割を担っており、岐阜県東濃医療圏を担う基幹病院として、放射線治療部門の充実をはかっております。

導入した新しい照射技術のご紹介  

多発脳転移性腫瘍に対応した放射線治療を2021年より開始しました。

単一アイソセンタ複数ターゲット定位放射線治療

(SIMT-SRS : single isocenter multiple target stereotactic radiosurgery)

概要

比較的小さな転移性脳腫瘍に対して、定位放射線治療(ピンポイント照射)を行っています。
これまで、転移性脳腫瘍の個数が数個であれば定位放射線治療、多発の場合は、脳全体に照射する全脳照射法が選択されてきました。近年、多発脳転移に対しても定位放射線治療が行われるようになってきています。これを可能にする照射技術が単一アイソセンタ複数ターゲット定位放射線治療となります。
単一アイソセンタ複数ターゲット定位放射線治療のために導入するシステムはBRAINLAB社製 『 Multiple Brain Mets SRS 』  です。
大きな特徴は通常1カ所あたりに要する治療時間とほぼ同等の時間で複数の脳転移に対し、ピンポイント照射が可能となることです。全脳照射の対象であった多発脳転移であっても、ピンポイント照射を行うことで高い局所制御率が期待できます。

Multiple Brain Mets SRS

当センター放射射線治療システムのご紹介

放射線治療装置

放射線を体の外から照射して、主にがんに対して治療を行う一般にリニアックと呼ばれる装置です。
当院では下記の2台の装置が稼働しています。

Novalis Tx  ( Varian / BrainLab )

Novalis Tx ( Varian / BrainLab )

TrueBeam ( Varian )

TrueBeam ( Varian )

放射線治療装置 オペレーションルーム

放射線治療装置 オペレーションルーム

放射線治療計画用CT

放射線治療計画用CT室をそなえています。ここで目的の部位に正確に照射するために、照射技法や患者さんの状態に合わせた固定具の作成も行います。当院の放射線治療計画用CTは4D-CTの撮像に対応しており、呼吸による臓器、患部の動きの評価が可能です。

GE社製 Optima CT580W

GE社製 Optima CT580W

4D-CT撮影の様子

肺がん治療を目的とした固定具と4D-CT撮影の様子
呼吸波形取得のための器具を使用しています
(写真は当院スタッフによる説明用)

実施している放射線治療照射技術・周辺技術についてのご紹介

四次元コンピューター断層撮影 (4D-CT :4-dimensional computed tomography )

治療部位が呼吸性移動を伴う場合、臓器変形や位置の変位が伴います。したがって照射範囲の決定プロセスにおいて呼吸性移動に伴うモーションマネージメントは特に重要です。4D‐CTは時間軸をもった画像取得が可能であり、呼吸に伴う位置変動を考慮した照射範囲の決定が可能となります。(時間軸は連続ではなく離散的であり、通常、1呼吸を10分割した画像を取得します)

強度変調放射線治療 ( IMRT : Intensity-Modulated Radiation Therapy )

空間的、時間的に不均一な放射線強度を持つ照射ビームを多方向から照射することにより、病巣部に最適な線量分布を得る放射線治療法です。リスク臓器に近接した複雑な形状の病巣に対しても線量分布を自在に調整することができ、また近接する複数病変にも対応できます。放射線治療の可能性を大きく広げる革新的治療法言えます。

回転型強度変調放射線治療( VMAT : volumetric Modulated Arc Therapy )

固定ビームを複数照射するIMRTの発展型で、治療装置を回転させながら照射する範囲や強さを変化させる照射法です。これまでのIMRTよりも短時間で治療が行えます。

画像誘導放射線治療 ( IGRT : image-guided radiotherapy )

治療直前にX線画像や、CT画像を取得し、リファレンス画像と照合し、算出した位置誤差に基づいて、ロボット寝台によりX,Y,Zの並進方向とPitch、Yaw、Rollの回転3軸を補正して照射を行う技術です。照射の途中でも位置照合を行う場合もあります。

定位放射線照射 ( STI : stereotactic irradiation )

比較的小病変に対して、高い位置精度を保ちながら、3次元的に多方向から照射することにより、局所に線量を集中させ、一度に大線量を与えて、1回~数回の照射で治療を行う治療です。1回で治療を行う方法は定位手術的照射( SRS : stereotactic radiosurgery )といい、数回に分ける場合は定位放射線治療( SRT : stereotactic radiotherapy )といいます。高い位置精度が要求されるため、特殊な患者固定具と、IGRTが施行できることが重要となります。当院では日本で保険適応となった年から実施しています。

体幹部定位放射線治療 ( SBRT : Stereotactic Body Radiation Therapy )

SRS、SRTは特に頭蓋内に対する定位照射を指して用いられることが多く、体幹部においてはSBRT(Stereotactic Body Radiation Therapy )またはSABR(Stereotactic Ablative Radiotherapy)と呼ばれます。体幹部は頭蓋内と異なり、呼吸性移動に代表される生理的な動きが伴い、X線画像で得られる骨の照合では軟部臓器の照合が難しく、治療計画段階では4D-CT、治療時はIGRTの中でも治療装置に搭載されるCBCT(コーンビームCT)による臓器照合が必須となります。また呼吸性移動を考慮した照射を行っています。

呼吸性移動管理下放射線治療

治療中の呼吸性移動が問題となる場合、呼吸管理下での照射を考慮します。とくにSBRTでは呼吸抑制法や、息止め下での照射、呼吸波形を取得して特定の呼吸位相下でのみ照射を行う呼吸同期照射を実施しています。呼吸移動管理下の照射では照射体積を小さくすることができ、周辺臓器への影響を減らすことが可能となります。

高精度放射線治療センタースタッフのご紹介

放射線治療科

放射線治療の専門科を設置し、高精度放射線治療を実施しております。
放射線治療専門医:常勤医師 2名、非常勤医師 2名

放射線治療技術部門

学会認定資格者を含む診療放射線技師が、放射線治療技術を支えます。
専従技師4名を含む1日あたり8名配属

放射線治療専従技師

職名・氏名

診療放射線技師
資格取得年度

認定・専門技師等

鎌田茂義

平成6年

治療専門医学物理士
医学物理士
放射線治療品質管理士
放射線治療専門放射線技師

日本医学物理学会会員
日本放射線技術学会会員
日本放射線腫瘍学会会員
日本医学放射線学会会員

東海放射線腫瘍研究会世話人
岐阜県放射線治療技術研究会世話人

岡河大介

平成19年

医療情報技師

日本医療情報学会会員
日本放射線技術学会会員

伊佐次範也

平成18年

放射線治療品質管理士
放射線治療専門放射線技師
X線CT認定技師

日本医学物理学会会員
日本放射線技術学会会員
日本放射線腫瘍学会会員

佐賀将人

平成22年

医学物理士
放射線治療品質管理士
放射線治療専門放射線技師
第一種放射線取扱主任者

日本医学物理学会会員
日本放射線技術学会会員
日本放射線腫瘍学会会員

看護部門

専従の看護師が放射線治療看護を担います。
常勤看護師2名

受付事務

放射線治療専属のスタッフが受付・事務を担います。
専従2名

認定資格の概要

放射線治療専門医

日本医学放射線学会によって一定水準以上の放射線科学全般に亘る知識と経験を認められた者に与えられる放射線科専門医の資格を取得した上で、放射線腫瘍学に関する深い専門知識と高い水準の放射線治療技術を有すると更に認められた放射線科医。

治療専門医学物理士

放射線治療全般に関わる、臨床医学物理業務を高い水準で遂行するために必要な専門的知識と応用能力を有することを、医学物理士認定機構が認めた医学物理士。

医学物理士

放射線医学における物理的および技術的課題の解決に先導的役割を担う。

放射線治療品質管理士

放射線治療における医療安全を担保するため、放射線治療の品質管理に関わる作業を自ら責任を持って行い、品質管理の観点からの病院全体の業務の監督、連絡・指示の伝達周知、管理部門への改善措置の提案等を行う。

放射線治療専門放射線技師

放射線治療専門領域における十分な知識・経験を持ち、患者から信頼される標準的な放射線治療技術を提供できる診療放射線技師。

外照射放射線治療実施件数のご紹介 

過去5年間の放射線治療人数と、高精度放射線治療(定位放射線治療および強度変調放射線治療)の件数

外部照射治療人数
定位放射線治療 脳の件数
定位放射線治療 肺の件数
定位放射線治療 他の件数
強度変調放射線治療 頭頸部の件数
強度変調放射線治療 前立腺の件数
強度変調放射線治療 その他の件数

放射線治療の流れについてのご案内

1.放射線治療医、看護師による診察と説明

はじめに放射線治療医による診察があります。これまでの検査等の結果より、体のどの部位に、どの装置を使って、どれくらいの放射線の量を当てるかといった治療方針を決定します。患者様の要望や生活状況、不安等をお伺いし、治療中の注意事項をお伝えして最後まで安心して放射線治療を受けていただくようにサポートします。

矢印

2.固定具の作成と治療計画用CT撮影 

放射線治療は、毎回同じ姿勢で治療を行うことがとても重要です.そのため、患者様個人に合わせた固定具を作成します。
また、CTを撮影する際に体の表面に印を付ける場合があります.この印は放射線治療を行うときに必ず必要になります.日々の生活の中で消えないように注意してください.印が薄くなった、または消えかけている場合など、当院にて補強いたします。
作成からCT撮影終了までおおよそ15分~60分程度となります。

矢印

3.治療計画

撮影したCT画像をもとに放射線治療計画を立てます.放射線治療計画とは、コンピューター上で放射線の照射方向や専門医の処方した放射線量を投与するために体内での線量分布をシミュレーションし、患部への線量や正常臓器への線量を計算し、確認します.放射線治療計画が決定したら、その計画に対して、いくつかの検証を行い、正確性を確認します。

矢印

4.治療開始

放射線治療は月~金の週5日(土、日曜、祝日は除く)毎日行います.放射線治療室に入り、治療台の上に寝ていただき、照射位置を合わせた後、放射線を照射します。

治療室における患者さんセットアップ

■放射線治療室で、放射線治療中は患者様お一人となります。

治療中は操作室側よりモニターで技師、看護師が注視しておりますので心配ありません.また治療中は室内に設置されたマイクにより患者様の声が聞こえるようになっています。 声が出せない場合は呼び出し用スイッチを手元にお渡しします。
治療室における患者さんセットアップ
(すべて当院スタッフによる説明用写真)

2名の診療放射線技師により、放射線治療装置を操作します。

■治療時間15分~60分程度となります。

治療室に入室してから退出までは個人個人で異なりますが、通常照射では15分程度、高精度放射線治療になると30分~60分程度になります。
実際の放射線のでている時間は短時間です。ただし、放射線治療を初めて行う時、放射線照射方法を変更するときなどは時間が長くなります。
2名の診療放射線技師により
放射線治療装置を操作します。

■放射線治療には痛みはありません。

放射線が体に照射されても痛みを感じることはありませんので安心してください。

■治療中は体を動かさないでください。

治療中に体を動かしますと、放射線が当たる部位が変わり、がん細胞に放射線十分の放射線が当たらず、関係ない部分に放射線が当たることになります。通常の呼吸は問題ありませんが、大きく咳をしたりするのは出来る限り控えてください.もし、痛み等でじっと出来ない場合はスタッフにご相談ください。(息を止めて、照射を行う場合もあります。)

矢印

5.経過観察

定期的に放射線科医師による診察があります.気になるようなことがあれば、診察日以外であっても医師又は看護師にいつでも相談してください。

品質保証・管理についてのご紹介

患部に毎回正確に、処方された放射線の量を投与するために多くの放射線治療システムとスタッフが関与します。質の高い放射線治療を実施するために、必要な精度管理ツールを備えており、さまざまな品質管理を行っています。正確に決められた放射線の出力が出来ているか、計画通りに放射線が照射されるかなど、多くの項目のチェックを行ってなっています。当院、スタッフによる品質管理に加え、メーカーによる定期機能維持点検や、第三者機関(医用原子力技術研究振興財団)による出力線量の評価も受けています。

品質管理の一例

専用デバイスによる毎朝の放射線出力チェック

専用デバイスによる毎朝の放射線出力チェック

左 呼吸同期システム OFF|右 呼吸同期システム ON

左 呼吸同期システム OFF
呼吸を模した動きにより、放射線による像がぶれている
右 呼吸同期システム ON
動いていても所定の呼吸タイミングのみに照射が行われるため像がぶれていない

3Dスキャニングシステムによる放射線出力のプロファイル確認作業

3Dスキャニングシステムによる放射線出力のプロファイル確認作業

赤外線誘導システムの精度確認

赤外線誘導システムの精度確認

照射中心の確認および照準レーザーのアライメント調整

照射中心の確認および照準レーザーのアライメント調整

基準線量計の校正

当院の放射線出力管理の基準となる線量計の校正を毎年行っています。
これにより国家標準とのトレーサビリティが確保されます。

トレーサビリティについて

トレーサビリティについて

トレーサビリティとは、計測結果の信頼性を示す指標である「不確かさ」がすべて表記された切れ目のない比較の連鎖を通じて、計測結果が国家標準または国際標準に関連付けられることを意味します。つまり、国家標準あるいは国際標準とのつながりを意味する「トレーサビリティ」が確保された計測器は、信頼性が証明されていることを示します。

医用原子力技術研究振興財団ホームページより
最終アクセス 2021年3月20日

第三者機関による放射線治療装置の出力確認

治療装置からの放射線出力は、毎朝の測定による確認と、毎月の水吸収線量の絶対線量測定による確認および、測定結果により出力校正を行っております。これらの出力管理に加え、医用原子力技術研究振興財団による第三者評価による確認も行っています。第三者評価では、施設毎の測定系とは別の独立した測定系による出力確認を行う事が可能です。

治療用照射装置出力線量の第三者機関による測定実施証明書
治療用照射装置(X線・電子線)の出力線量測定結果について

日本放射線腫瘍学学会認定施設

当院、高精度放射線治療センターは学会認定施設(日本放射線腫瘍学会)です。 

日本放射線腫瘍学会認定施設認定証

安全かつ高精度の放射線治療を推進することを目的として、学会の示す診療基準、人的(認定資格等の)基準、設備基準、その他の基準を満たす施設を日本放射線腫瘍学会が認定するものです。

中央放射線部インデックスへ戻る